第1054回・舘野家住宅

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国の重要伝統的建造物群保存地区の一部である栃木県栃木市泉町にある舘野家住宅は、幕末より肥料・履物を扱っていた商家である。昭和7年(1932)に建てられた和洋折衷の外観を有する写真の店舗棟と、その背後にある主屋及び蔵3棟が国の登録有形文化財となっている。

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舘野家住宅がある泉町は、「栃木市嘉右衛門町伝統的建造物群保存地区」の一部であり、以前紹介した岡田記念館翁島別邸も同地区内にある。

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背後に続く主屋と土蔵、味噌蔵、鼻緒蔵が平成16年(2004)にそれぞれ国の登録有形文化財となっている。店舗棟と主屋は昭和7年、蔵3棟は明治時代中~後期の竣工とされる。

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旧例幣使街道に面して建つ店舗棟は、洋風の外観とする。但し内部は土間と12畳の帳場から構成される伝統的な商家の造りとなっている。

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店舗棟の1階正面右手には、元々はショーウインドウがあったと思われる。

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2階中央にはベランダを設ける。
外壁の列柱やベランダの手摺などは石造風に仕上げているが、木造である。

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2階の南側(正面向かって左側)のみ洋室を設け、それ以外は全て和室になっているという。

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2階正面ベランダの奥には和風の硝子戸が建てこまれている。建具は摺り硝子と透明硝子の組み合わせで、意匠も凝っている。

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伝統的な造りをベースにしながらも、洋風意匠を取り入れた近代の商家の事例として興味深い建物である。
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第1032回・岡田記念館翁島別邸

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栃木県栃木市小平町にある岡田記念館翁島別邸は、江戸時代初期から続く当地の旧家である岡田家の隠居所として、大正13年(1924)に建てられた。銘木を多用した上質の近代和風建築である。国登録有形文化財。

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国の重要伝統的建造物保存地区に指定されている栃木市嘉右衛門町にある岡田記念館。翁島別邸とは目と鼻の先にある岡田家の本宅で、記念館として一般公開されている。

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本宅とは異なり、緑に囲まれひっそりとした印象の翁島別邸の門。
「翁島」という名称は、敷地が川に挟まれた島状になっており、隠居した当主の住まいであったことからこの名が付いたという。

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岡田家は古くは武士であったが、帰農して江戸時代初めに当地に移住、荒地を開墾しながら地域の発展に尽くし、現在で26代目という旧家である。なお、当主は代々、当地の地名にもなっている「嘉右衛門」という名を襲名している。

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翁島別邸は22代嘉右衛門が自らの隠居所として建てた。派手さは無いが、良質の材料を用いて入念に造られた質の高い近代和風建築である。戸袋は装飾を施した銅版張り、屋根瓦も特注品であるという。

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内部も随所に良質の材木が惜しげもなく使われている。

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一階玄関脇の座敷。
翁島別邸は岡田記念館と共にドラマのロケなどによく使われているとのこと。

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座敷の床の間と書院窓。床柱は極めて貴重とされる黒柿。

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一階の縁側。大きなケヤキの一枚板が使われている。

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一階の茶の間。
造りつけの戸棚には、奥に隠し引き出しを設けるなど、収納した貴重品を守るための工夫が施されているという。

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一階客間も、床の間周りに黒檀、紫檀、鉄刀木(タガヤサン)を用いた銘木尽くし。

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手洗いには巨大な石の手水鉢が置かれている。

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洗面所と浴室。

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二階座敷の床の間。
床柱は吉野杉の絞り丸太で床板はモミジ、天井は薩摩杉を用いた、館内でも特に贅沢な造りと思われる部屋。

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二階座敷から外を望む。
翁島別邸は大正13年竣工の主屋と、昭和初期に建てられた土蔵が国登録有形文化財となっている。

第987回・旧英国大使館別荘

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平成28年(2016)7月1日に開園した、中禅寺湖のほとりにある英国大使館別荘記念公園では、明治29年に建てられた旧英国大使館別荘が公開されている。この建物は元々は、幕末から明治にかけて外交官として活動、駐日公使などを務めたアーネスト・サトウの別荘として建てられた。

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日光は明治から昭和戦前にかけて、国際的な避暑地として繁栄した。中禅寺湖のほとりには現在も、明治から昭和初期に建てられた4か国(英、伊、仏、ベルギー)の大使館別荘が並んでおり、フランスとベルギーは現役で使われている。

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現役を退いたイタリアと英国の大使館別荘は、共に栃木県が取得、建物を保存整備の上、中禅寺湖の風光を満喫できる公園として開放されている。なお、英国よりも先に公開されている旧イタリア大使館別荘については当ブログでは既に紹介済なので、本記事と併せて御覧頂きたい。

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文久2年(1862)、イギリスの駐日公使館の通訳生として来日したアーネスト・サトウ(1843~1929)は、その後明治後期にかけてイギリス公使館の通訳、駐日公使などを務め通算25年間にわたり日本に滞在した。

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滞在中、中禅寺湖の風光に魅せられたサトウは明治29年(1896)に別荘を建てた。サトウが日本を離れた後は、英国大使館の別荘として平成20年(2008)まで使用されていた。

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中禅寺湖では明治から昭和戦前にかけて、夏季には外国人達によるヨットレースが開かれ、賑わった。

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3段重ねの石垣は、サトウが同じ英国人で、当ブログでも何度か紹介している建築家のジョサイア・コンドル(1852~1920)に相談して造らせたもの。別荘はその上に建っており、室内からの眺望は非常によい。

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日本人の大工によって建てられた別荘は、外観は和風だが内部は暖炉を備えた洋室になっている。

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白ペンキで塗られた内装と黒塗りの外観は、戦後間もない頃の改装によるもので明治期からのものではないが、修復に際しては色調はそのまま残された。

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1階広縁から望む中禅寺湖の眺め。

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歪んだガラス戸は明治期からのもの。

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暖炉のある1階の旧書斎。暖炉は旧書斎と旧食堂の2箇所に設置されている。

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暖炉棚や金物飾りは、明治29年の創建当初からのものと考えられている。

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2階広縁。床板の殆どが新材に交換されているため、余り古さは感じられない。

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2階からの中禅寺湖。周囲の自然は創建当時と大きく変わっていない。

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旧イタリア大使館別荘とともに、国際的な避暑地として繁栄した往時の日光界隈を偲ぶには格好の建物である。

第972回・旧関根家住宅

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栃木県栃木市倭町にある旧関根家住宅は、明治から昭和初期まで煙草卸売商を営んでいた関根家の店舗兼住居。通りに面した店舗棟は大正11年(1922)に建て替えられた煉瓦タイル貼りの洋風建築。背後に続く主屋、文庫蔵と共に国の登録有形文化財となっている。

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栃木は江戸時代より例幣使街道の宿場町として、また船運による問屋町としても繁栄していた。現在も中心街の大通りの両側には、重厚な造りの見世蔵(店舗棟)や土蔵が残されており、街の観光資源となっている。

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明治以降、店舗棟を洋風に改築する商家も現れた。旧関根家住宅もそのひとつで、背面に建つ明治中期竣工の主屋江戸時代の文庫蔵はいずれも伝統的な造りとなっている。

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正面外壁は、左右対称に縦長窓や装飾等が整然と配された端正な外観となっており、パラペット(軒)部分などには大正期の洋風建築に多いセセッション風意匠が見られる。

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玄関の両脇に配された窓もショーウインドウ風の大きな窓になっており、当時としては極めてハイカラな外観であったものと思われる。

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玄関部分の外壁は緩やかな曲面を有している。

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外壁に貼られた茶褐色のタイルは、明治以来の赤煉瓦に代わってより新しさを感じさせる外装材として、当時流行していた。

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玄関上部の照明も古いものが残されている。

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店舗棟の脇にひっそりと設けられた通用口の上部にある照明も、古いものが残されている。

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煙草商としての営業は昭和初期に終え、その後は貸店舗やギャラリーに使われていた。

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平成28年5月、関根家から店舗棟、主屋、文庫蔵及び敷地が栃木市に寄贈された。
栃木市では今後、旧関根家住宅を「蔵の街」の観光資源として活用していくものと思われる。

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旧関根家住宅の近くに建つ旧安達呉服店(好古壱番館)も、店舗棟を洋風に改築した商家のひとつで、大正12年(1923)の竣工。

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旧関根家住宅と同様、国の登録有形文化財となっている。

第965回・栃木高等学校講堂・記念図書館

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栃木県栃木市入舟町にある栃木県立栃木高等学校は、明治29年(1896)設立の「旧制栃木県尋常中学校栃木分校」を前身とする。構内には旧制中学校時代の建物が3件(旧本館、旧講堂、旧記念図書館)現存しており、いずれも国の登録有形文化財となっている。

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正門越しに旧記念図書館が見える。

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国の登録有形文化財となっている3件のうち、敷地内にある、明治29年(1896)に建てられた旧本館は見ることができないが、旧講堂と旧記念図書館は街路に面しており、敷地外からでも見ることができる。

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大正3年(1914)に建てられた旧記念図書館。3件の登録有形文化財の中では最も新しい。

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同窓会の記念事業として建てられ,1階が図書閲覧室、2階が和室の大広間となっている。

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現存する旧制中学校の専用図書館としても珍しい存在である。

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旧記念図書館の玄関。

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明治43年(1910)に建てられた旧講堂。

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上部を半円型とする窓を連続させた外観が特徴。

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隣接する茨城県の旧太田中学校講堂と同様、内部も白漆喰塗りの天井や、飾り柱を備えた演壇廻りなど華麗な意匠を有する。

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通常は非公開なのが残念である。

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半円窓の周りに施された装飾。

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栃木高等学校の敷地は旧栃木県庁の一部であり、周辺一帯には古い町並みが残されている。

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以前当ブログで取り上げた旧栃木町役場旧横山家住宅栃木病院も、近い位置に建っている。
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