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(ブログ開設)第1回・旧兵庫県庁舎(兵庫県公館)

管理人の興味の赴くまま、近代の建築物をご紹介し、また思いつくことを書き連ねたいと思います。
よろしくお願いします。
第1回は現存する明治期の官公庁舎の傑作、旧兵庫県庁舎(現兵庫県公館)をご紹介いたします。

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現在、「兵庫県公館」として使われている旧兵庫県庁舎は、明治35年に建てられた洋風建築。昭和20年に戦災で外壁を残して全焼するが、修復・改修され分庁舎として引き続き使用された。庁舎としての役目を終えた後は内部を再度改修し、県の迎賓施設及び県政資料館となって現在に至っている。国の登録有形文化財。

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JR元町駅の北側、坂道を登った突き当りに建っている旧兵庫県庁舎。華麗な門扉のある正門や付属の門衛所、敷地を囲む塀も明治35年(1902)の創建当時からのものである。

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設計者の山口半六(1858~1900)は、辰野金吾などと並ぶ最初期の日本人建築家の一人で、フランス留学後は文部省に入り旧制高校の校舎などを数多く手がけた。退官後、神戸を拠点に設計事務所を開いたが程なく病没、兵庫県庁舎が遺作となった。

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同時期の多くの官公庁舎に見られるような豪壮さや威圧感はなく、穏やかな印象を与える佇まいの庁舎である。前庭に生い茂る木々がその印象をさらに強めている。

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大正から昭和初期には手狭になったことから、周囲には県会議事堂や県警察部などが増築されたが、昭和20年の神戸空襲で被災するまでの43年間、本庁舎として使われていた。なお、増築された建物はいずれも現存しない。

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内部と屋根は戦災で失われたため、創建当初のまま残るのは煉瓦造の外壁だけであるが、現在、兵庫県庁の構内で戦前から残るただ一つの建物である。

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外壁を残して焼け落ちた旧本庁舎は、終戦後には撤去も検討されたが、修復した上で分庁舎(南庁舎)として使用されることになった。復旧工事は2期に分けて行われ、北側が昭和24年(1949)、南側が昭和27年(1952)に完成する。

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復旧に際しては南北にあった中央のドームが角型に改変されたものの、古典的なマンサード屋根の形式で再建された。なお、南側正面はその後の改修で創建当初の姿に復元されたが、写真の北側については昭和24年当時の形態で保存されている。

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昭和末期には再び存続の危機に晒されるが保存運動が実を結び、内部に大規模な改修工事を施して昭和60(1985)年、県の迎賓施設及び県政資料館「兵庫県公館」として開館した。

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なお、少し後に建てられた旧神戸市庁舎は旧兵庫県庁舎の小型版といった趣の美しい建物で、隣接する赤煉瓦の神戸地方裁判所と共に昭和末期まで残っていたが、兵庫県公館開館と同時期に解体されてしまった。その消失は惜しみても余りある。

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兵庫県庁舎と同様に戦災で屋根と内部を失った神戸地方裁判所は、改築に際し正面及び側面の外壁だけは保存されたが、新庁舎の低層部に外壁が貼り付くように残る姿は、旧兵庫県庁舎とは比べものにならない。

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旧兵庫県庁舎は内部こそ創建時の姿を残していないが、神戸に残る明治の近代洋風建築の中では最も良好な状態で保存されている建物である。

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兵庫県公館は南北2カ所に玄関があり、中山手通に面した北玄関が県政資料館の入口で、南側の旧正面玄関が迎賓施設の玄関となっている。迎賓施設の内部は定期的に一般公開も行われており、見学が可能である。

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玄関を入ってすぐの位置にあるエレベーターホール。
外観と同様に、半円アーチが随所に見られる。

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昭和60年の改修で間取りと内装は全面的に一新されたが、迎賓部門を中心に格調の高い造りが施されている。

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かつての中庭は高い天井を持つ大ホールに改装され、各種式典の会場などに使用されている。天井のシャンデリアは県の花であるノジギクを意匠化したもの。

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大ホールの上は噴水のある屋上庭園となっているが、かつての中庭の面影を残している。ドーム屋根が載る南側の屋根は、中庭側に張り出す形になっていることが分かる。

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戦時中に空襲等で損傷を受けた洋風建築は戦後の修復に際し、東京駅舎などのように外観が簡略化されるものが多かったが、旧兵庫県庁舎は本格的な意匠で再建されている。明治建築の文化的価値を考慮したものと思われるが、終戦から間もない時期の工事としては注目に値する。

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アーチが連なる2階廊下。
2階には貴賓室や知事室、大小の会議室等が配されている。

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折り上げ天井に大理石の暖炉を備えた知事室。
なお、館内の随所には兵庫県にゆかりのある芸術家の作品が飾られている。

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皇族などの休憩室などに使用される貴賓室は、全面板張りの内壁に折り上げ格天井と、最も格調高く造られている。

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大会議室。これらの部屋は昭和60年の改修工事で新たに造られたものであるが、いずれの部屋も外観に相応しいものである。外に面した窓の建具を、明治期の形状を模したアルミサッシにしているところも好感が持てる。

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北側の県政資料館内には創建当時の兵庫県庁舎の復元模型が展示されている。細部まで精密に造られており、現在の姿との違いを知る上でも興味深い展示品である。

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現在と大きく異なるのは北側にかつてあった角形の大ドームである。創建当初はこの中に県会議事堂が設けられていた。現在と異なり、北側も中庭に大きく張り出していたことが分かる。

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ドーム屋根が載るかつての姿も良いが、現在の北玄関も魅力的である。昭和60年の改修工事では、南側の正面は創建時のドーム屋根に復元され、北側は戦災復旧時の姿がそのまま残された。創建時の形態を尊重しながら改修の履歴も残している兵庫県公館は、歴史的建築の秀逸な改修事例ではないだろうか。

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旧兵庫県庁舎の風格ある佇まいは、現存する戦前の官公庁舎の中でも屈指の存在である。改修によって新しく生まれ変わった内部空間も建物の外観にふさわしいもので、神戸に残る近代洋風建築の中でも特に優れた保存再生事例と言ってもよい。

(追記)
本記事は令和元年9月10日に写真を追加、もしくは一部を差し替え、記事本文も書き改めました。
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