第242回・南天苑(旧潮湯別館)

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大阪・堺の大浜公園内にはかつて、海水を沸かした入浴施設「大浜潮湯」や水族館等から構成される一大海浜レジャー施設があった。中でも大正2年(1913)開業の大浜潮湯は、辰野金吾設計による洋館と日本建築から構成されていた。洋館はその後戦災で焼失するが、日本建築は大阪の南東部の山間に温泉旅館として現在も健在である。今回紹介する「南天苑」である。

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南天苑は大阪府の南東に位置する河内長野市にあり、南海高野線天見駅から見ることができる。

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堺の浜辺にあった入浴施設がなぜ現在山間部の温泉旅館になったか、その原因は昭和9年に大阪をはじめ近畿地方一帯に大被害を齎した室戸台風にある。大浜公園の諸施設は台風で大被害を受け、別館として使われていた潮湯の日本建築部分は倒壊したという。

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但し倒壊と言っても粉々になったわけではないので部材は再利用されることになる、翌昭和10年に現在地に移築再建、当初は大阪市内の料亭旅館の別館として営業していたが、戦後現在の南天苑が開業、現在に至る。

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潮湯時代は洋館部分が大浴場や娯楽施設で構成されていたのに対し、別館である日本建築は家族湯として利用できる小浴場と休憩用の個室から構成されていた。家族や親しい者同士寛ぐには洋館より日本建築の方がよかったのであろう。なお、旅館として再生するに際しこれらの個室はそのまま旅館の座敷に転用出来た訳である。

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二階の廊下。規模、間取りも潮湯時代と大差はないようである。

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館内の階段はそれぞれ飾り窓や手摺りに異なる意匠が施されている。

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モダンな意匠の飾り窓。

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自然木を用いた階段手摺と親柱。

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寺院風の建具があった。客室の扉ではなく用途は不明。

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傷だらけの親柱に、建物の波乱の歴史が感じられる。

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曲がった自然木を手摺にした面白い階段。欄干は竹。

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玄関先。

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もし昭和9年の室戸台風で倒壊、移築されていなければ、11年後の昭和20年には空襲で間違いなく洋館と運命を共にしていた筈であり、建築にも人間と同様に運不運があるものと思わせられる。

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正面全景。

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現在の南天苑御当主は、後年に改造を加えた個所について徐々に移築当初の姿に戻す工事を進めて居られる。
現在も進行中であり、今後が楽しみである。

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堺にあった頃は、この日本建築と鍵の手状に洋館が配置されていた。
南天苑が旧潮湯別館であったというのは長らく伝承でしかなかったが、近年物的証拠も発見され間違いないことが裏付けられた。

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平成15年に国登録有形文化財となっている。
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