第1012回・旧林國蔵邸(旧林家住宅)

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明治から昭和にかけて生糸の生産で繁栄した長野県岡谷市には、現在も当時の繁栄を偲ばせる建物がいくつか点在するが、その中でも最も見応えがあるのが、JR岡谷駅にほど近い御倉町2丁目にある、岡谷でも指折りの製糸家であり実業家でもあった林國蔵の旧邸である。明治40年(1907)に建てられた和洋併置式の邸宅は現在岡谷市が所有しており、「旧林家住宅」として一般公開されている。国指定重要文化財。

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林國蔵(1846~1916)は岡谷でも有数の製糸業者となり、後には炭鉱採掘や火薬・銃砲の製造販売などにも手を広げ成功を収めた実業家である。また中央本線の開通にも尽力するなど公益事業にも力を注いだ。

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和風の主屋全景。大屋根が特徴的な豪壮な建物。
林國蔵は明治40年に豪壮な和洋併置式の邸宅を築くが、明治末には事業の中心を製糸業から火薬・銃砲の製造販売などの他業種に移したこともあり、本拠地を岡谷から埼玉県の深谷に移した。

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まだ竣工からさほど年数を経ていない岡谷の邸宅は、深谷に移って以降は林家の別宅として扱われ、岡谷市に寄贈されるまで日常使われることはあまり無かったという。

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使われることが少なかったため、建物のみならず内部の各調度類や日常道具に至るまで、明治末期から大正初期の状態で非常によく保存されている。写真は主屋台所及び茶の間であるが、当時としては先進的なガス台が設置されており、この時期の古民家によく見られるカマドは無い。

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非常に精緻な彫刻が施された仏壇を据えた仏間。両脇は造りつけの茶箪笥になっており、夫人の居室としても使えるように造られている。

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主人書斎として造られた一階座敷。

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接客用の下座敷。反対側に上座敷がある。

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下座敷から上座敷を望む。欄間及び付け書院の彫刻は、仏壇の彫刻も手掛けた清水考古斎という人物の手になる。仏壇同様、極めて精緻な彫刻が施されている。

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上座敷の縁側からは中庭に面した渡り廊下を経て、土蔵造で一部が洋館の造りになった離れに続いている。

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離れの二階には、押し入れの内側に入口を設けた隠し部屋のような座敷があり、当時極めて高級な壁紙であった金唐革紙を壁から天井まで貼りめぐらせている。金唐革紙は明治から大正初期にかけ多くの洋風建築の内装を飾った国産の壁紙であるが、オリジナルがそのまま残り、かつ和風建築の内装に用いられた例は極めて少ない。

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電燈の笠も明治から大正期のものがよく残されており、それぞれバラエティに富んでいる。

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明治期の建物でよく見られる絵入り砂摺り硝子が、各室の襖、障子に用いられている。

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(上)上座敷書院窓の飾り。羊飼いの情景。
(下左)縁側の仏間・下座敷の境目に設けられた蜘蛛の巣をあしらった欄間(下右)仏壇の天女

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離れは二階建土蔵造の座敷と、建物の内部に取り込まれた形で設けられている内蔵、写真の平屋建て洋館で構成されている。また洋館の正面向かって右側は、中が茶室になっており、側面は外観も和風の造りになっている。

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極めて精緻な洋館玄関ポーチの装飾は、かなり脱落・欠損しているが、もはや再現は不可能ではないかと思われる。それどころか、現状維持すら難しいのではないかと不安になるぐらいの細かい装飾である。

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洋館の内部は、洋風の玄関ホールと応接間、日本座敷二室(茶室、広間)で構成されている。写真は玄関奥の応接間。

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洋館内部の装飾。
(上)玄関ホールと応接間の境目の漆喰飾り
(下左)応接間の天井照明台座(下右)玄関ホールの天井照明台座

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玄関ホールと応接間の天井にも離れ二階座敷と同様、金唐革紙が貼られている。今は色褪せているが当初は金色に輝いていた筈である。本来の金唐革紙がどのよう絢爛豪華なものであるかは、弊ブログ過去記事で取り上げている神戸市の移情閣(復元された金唐革紙が貼られている)の記事をご参照頂きたい。

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洋館玄関ホールの脇に設けられた茶室。
右側の扉が玄関ホールに繋がっている。

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茶室と続き間になっている広間。

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内蔵と離れ座敷の間の廊下は、天井まで漆喰で塗り込められている。

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離れから主屋に続く渡り廊下。

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主屋に戻る。主屋の二階には贅を尽くした客座敷のほか納戸と女中部屋があるが、こちらは非公開。

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主屋の脇には外蔵・穀蔵・味噌蔵が並ぶ。写真手前に写る外蔵は繭蔵として造られ、カツラの木を用いていることから桂倉とも呼ばれていた。付きあたりに入口が見えるのが味噌蔵、その奥には穀蔵がある。

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穀蔵は離れの内蔵とつながっており、全体で長屋門のような形になっている。

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ナマコ壁で覆われた二つの蔵の間をくぐると、洋館の脇に出る。

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穀蔵の妻壁には林家の屋号である「イチヤマカ」(一山カ)の文字が漆喰で描かれている。

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旧林國蔵邸は岡谷を代表する近代化遺産であり、長野県内に現存する和洋併置式住宅としても貴重なものである。
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