第1043回・星薬科大学本館

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東京都品川区荏原2丁目にある星薬科大学は、実業家で政治家でもある星一が、自ら設立した星製薬の社内に教育部門を設けたことに始まる私立大学である。同大学のシンボル的建物である本館は、大正13年(1924)にアントニン・レーモンドの設計で建てられた。最も印象付けられるのが写真の大講堂で、天井の意匠は星一の名に因んで星型となっている。

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清水組(現・清水建設)の施工により大正11年(1922)に着工、翌年の関東大震災を挟んで2年後の大正13年(1924)に竣工した。平成14年(2002)には清水建設の設計施工により、耐震補強工事が施されている。

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現在は大講堂、事務室、会議室などとして使われているが、創建当時はこの本館に学校の全ての用途が集約されていた。かつては地下に室内プールも備えていたという。

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本館前にある創立者・星一(1873~1951)の胸像。明治44年(1911)に創業した星製薬は本邦初であるチェーンストアの導入や、外科手術用のモルヒネの国産化成功などによって大正年間に大発展を遂げ、星は「東洋の製薬王」と称されるまでになった。星薬科大学本館は星一の絶頂期に建てられたといってもよい。

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本館の設計者であるアントニン・レーモンド(1888~1976)は、帝国ホテル建設のため来日したフランク・ロイド・ライトの事務所スタッフのひとりであった。モダニズム建築家として知られるレーモンドであるが、星薬科大学本館はライトの弟子として影響を受けていた時期の建物なので、細部装飾など随所にライト風の幾何学模様が見られる。

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正面玄関。
玄関の庇に施された幾何学装飾など、ライトの帝国ホテルを連想させる意匠が見られる。

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1階玄関ホール。突きあたりが大講堂の入口。

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大講堂入口の照明。

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大講堂内部。現役の学校施設であり通常は見学はできないが、春と秋の年2回開催される薬草見学会ではキャンパスが開放されるので、大講堂をはじめとする本館の内部も見学ができる。

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星薬科大学は、明治44年の星製薬設立と同時に設置された社内の教育部門に始まり、大正11年(1922)に星製薬商業学校、昭和16年(1941)に星薬学専門学校となり、第二次大戦後の昭和25年(1950)に現在の星薬科大学が設立され、現在に至っている。

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大学に移行した昭和25年頃には、この大講堂でNHK「のど自慢」(当時はテレビはまだ無いのでラジオ番組)の会場に使われていたという。

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正面の演壇。
公会堂や大学の講堂など、戦前に建てられたホールで現存するものはいくつかあるが、星薬科大学は内部も細部に至るまで、往時の姿を非常によく残しているもののひとつである。

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星型の大講堂天井。

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なお、星一は作家の星新一(1926~1997)の父としても知られている。

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薬草をデザインした大講堂のステンドグラスは昭和58年(1983)に取り付けられた。元々は異なるデザインのステンドグラスがあったが、戦時中の防空対策により窓をコールタールで塗りつぶし、戦後も復元が不可能になってしまったという。

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館内の随所に見られるライト風の意匠。

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廊下の床はコンクリート打ちっ放しの中に、大理石の破片を斑に埋め込んでいる。

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扉の意匠もライト風。
大正末期から昭和初期の洋館の建具には、このようなライト風意匠を施したものがよく見られる。

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星型天井の大講堂と共にこの建物の特徴となっているのが、館内のスロープ。
階段は無く、全てスロープになっている。

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スロープを3階から見下ろす。

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黒と白のコントラストが利いているスロープの吹き抜け。

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スロープの壁面には、飛鳥時代の薬狩りをモチーフにした壁画が4面、大東亜戦争中の昭和18年(1943)に描かれている。

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本館前の並木道からは、大講堂を覆うドーム屋根が見える。
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星薬科大学#03

ここへ来るのも3度目になります 今、本館へ続く並木道を分断する都市計画が浮上しています この景観が守られる事を望む 本館へ近付けば近付く程ドーム状の屋根は見えなくなり全体の規模を小さく思わせる 入り口の左右には幾何学模様 F.L.ライトから独立して間もないレーモンド作品なので...

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No title

ドコモモプレートは設置されてましたか?
春の時点ではまだだったので気がかりでした
ここは品川区としても別途ツアーを開催したみたいですね
どんどん盛り上がって並木道の分断を避けられたら幸いです

Re: No title

プレートについては、当方は気づきませんでしたが、設置されていたかも知れません。
地域の文化遺産として、建物のみならず周辺環境も保全されるようになるとよいのですが。
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