第1071回・耕三寺聴聲閣

s_IMG_0108222.jpg

前回記事にて紹介した広島県尾道市瀬戸田町の耕三寺には、寺を開いた金本耕三(耕三寺耕三)が母親の居宅として昭和2年(1927)から建設に着手した和洋併置式の書院「聴聲閣」がある。贅を尽くした造りの母親の居室や濃密な空間を持つ洋館など見どころの多い建物である。国登録有形文化財。

s_PB020183.jpg

耕三寺を開いた耕三寺耕三(旧名・金本福松 1891~1970)は、明治24年に神戸に生まれ、溶接工から発明家、実業家となり、昭和の初めには大阪で大口径特殊鋼管の製造会社を経営していた。昭和2年(1927)より母親の故郷である瀬戸田に母親のための別荘を建て始めた。

s_PB020181.jpg

昭和9年(1934)に母親が没すると、その菩提を弔うと共に報恩感謝の念を込めた寺院の建立を発願、翌昭和10年には得度し「耕三」の法名を受けた。(昭和31年には姓を金本から耕三寺に改め、耕三寺耕三となった)その後、昭和45年(1970)に78歳で没するまで、生涯をかけて伽藍の造営を行った。

s_PB020182.jpg

耕三寺の伽藍は既存の聴聲閣に隣接する形で造営が行われ、鉄筋コンクリート造2階建ての洋館と木造平屋建ての書院から構成される聴聲閣も、耕三寺の書院、客殿として一部増改築が加えられ、現在残る形になった。

s_PB020091.jpg

庭園越しに見る書院棟。

s_PB020095.jpg

正面玄関は洋館の隣にあり、唐破風付きの車寄せを備える。その内側の天井は、写真のように彫刻と天女像に飾られた豪壮な造りであるが、ここから入ることはできないので、内側から見学する形になる。

s_PB020097.jpg

正面玄関は写真の来客用玄関とその脇に設けられた内玄関で構成されている。台所側には勝手口があり、見学に際しては勝手口から入るようになっている。

s_PB020153.jpg

畳廊下のある縁側。

s_PB020105.jpg

主座敷。床の間の掛け軸に描かれている人物が耕三寺耕三。

s_PB020150.jpg

仏間は格天井となっており、天井画で華やかに飾られている。

s_PB020107.jpg

聴聲閣は母親の居室に最も贅を尽くしているのが特徴である。天井は折上格天井、銘木を据え床柱、色鮮やかな金襖や欄間彫刻など、絢爛豪華の一語に尽きる造りとなっている。

s_PB020111.jpg

母親のために建てた住まいと言えば、以前当ブログで取り上げた埼玉県川島町の旧遠山元一邸(遠山記念館)がある。いずれも母親への感謝の念を込めて建てた点では共通するが、その趣は対照的であるのは興味深い。(旧遠山邸の過去記事も御参照頂けると幸いである)

s_PB0201093.jpg

欄間には梅と小鳥がいる。
桃山調の彩色された欄間彫刻は個人邸では珍しい。

s_IMG_0062.jpg

洋館と書院の間には石組を配した中庭を設ける。写真は洋館側から見た母親居室。

s_IMG_0060.jpg

洋館に隣接して浴室及び脱衣場・化粧室が設けられている。
ステンドグラスを嵌め込んだ円形窓は浴室の窓である。

s_PB0201153.jpg

以前取り上げた小樽の和光荘(旧野口喜一郎邸)では、象が照明を吊り下げていたが、聴聲閣では小鳥が照明を咥えぶら下げている。

s_PB020124.jpg

洋風に造られた脱衣場・化粧室。写真の反対側には造りつけの鏡台が置かれている。

s_PB020125.jpg

石造りの湯船を備えた浴室。

s_PB0201192.jpg

ステンドグラスと型押し硝子を組み合わせた浴室の窓。

s_PB020121.jpg

浴室側からみた円形窓。

s_PB0201162333.jpg

円形窓のステンドグラス。

s_PB0201322333.jpg

ステンドグラスを嵌め込んだ円形窓は、ほかに2箇所ある。
洋館応接間の入口前には貝の図柄。

s_PB0201312.jpg

階段踊り場には船の図柄。
いずれも瀬戸内の島にある館にふさわしい図柄と言える。

s_PB020145.jpg

洋館の1階応接間には、庭に面してテラスを兼ねたポーチが設けられており、来客はここから直接中へ入ることも出来る。

s_PB020137.jpg

中華風の家具調度品で飾られた洋館1階応接間。

s_PB020135.jpg

部屋の角に設けられた暖炉。

s_PB020134.jpg

洋館の2階は来客用の寝室となっているが、非公開である。

s_PB020158.jpg

勝手口がある台所の土間。現在は見学者用の玄関及び受付として使われている。造りつけの戸棚など創建当時の設備が残されている。

s_PB0201572.jpg

裏方である台所の建具や窓の欄干にも意匠を凝らす。

s_PB020179.jpg

広島県内に現存する戦前の和洋併置式の邸宅の中では、耕三寺聴聲閣の造りの充実ぶりは群を抜いている。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

syoukou

Author:syoukou
(ブログについて)
現存する近代日本の歴史的遺産(台湾など旧日本領土も含む)を建造物・土木構造物を中心に、思いつくままに取り上げております。

(写真について)
写真は特記しない限り管理人の撮影です。また絵葉書等の古写真は管理人の所蔵品、もしくは訪問先の展示品を撮影したものです。利用・転載等希望される場合は管理人まで御連絡頂けると幸いです。

(リンクについて)
リンクはフリーです。なお、リンクを張らせて頂いている他の方のページは一部を除き相互リンクとなっております。

(コメントについて)
記事と関係の無いコメントは削除させて頂く場合もあります。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード