第1065回・小机家住宅

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東京都あきる野市(旧西多摩郡五日市町)三内にある小机家住宅は、明治8(1875)頃に当時の銀座煉瓦街の洋風建築を模して建てられた擬洋風建築の住宅。明治初期の文明開化の様相を今日に伝える数少ない擬洋風建築である。東京都指定有形文化財。

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JR五日市線・武蔵五日市駅から徒歩10分程度の場所にある小机家住宅。秋川街道に面して門を開いた敷地の奥にひっそりと建っている。

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江戸時代より林業を営んできた小机家の7代目当主、小机三佐衛門によって建てられた。材木の取引のために出かけた深川木場からの帰り、当時造られて間もない銀座煉瓦街の洋風建築群を見て大いに刺激を受け、洋風の自宅を新築したという。

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伝統的な土蔵造りをベースにしつつ、正面には2層のベランダを張り出し、輸入物の鉄製防火扉やガラス窓、屋根材には同じく輸入品である亜鉛引トタン板を用いて建てられた。

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外側にベランダを張り出すのは、幕末から明治中期の擬洋風建築に多く見られ、長崎の旧グラバー邸や大阪の泉布観、和歌山の郭家住宅旧三重県庁舎、山梨の旧睦沢学校などがあり、官公庁、学校、住宅など建物の用途を問わず、現在でも各地に残されている。

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小机家のモデルとなったという銀座煉瓦街は、大阪の造幣寮(現・造幣局)やその迎賓施設である上述の泉布観などを建てた、お雇い外国人のウォートルスが明治5年(1872)から翌年にかけて設計を担当した。

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銀座煉瓦街はその後大正12年の関東大震災で壊滅し、現存する建物はない。小机家は銀座煉瓦街に直接影響されて建てられ、今に残されている希少な存在と言える。

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関東大震災では小机家自体も被災し、修復が行われている。1階ベランダの硝子戸などは震災後交換されたため、創建当初のものが残る2階と比較すると、窓の形やドアノブなど細部が微妙に異なるのが分かる。

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アーチ型に造られた玄関部分。角の隅石と同様、漆喰を塗って石造風に見せたものである。アーチの要石部分には、獏(ばく)の頭部をあしらった漆喰彫刻が取り付けられている。

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獏の漆喰彫刻は震災で破損し、長年そのままであったというが、現当主が先代当主と共に復元されたという。

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小机家住宅は現在、1階の一部を喫茶室「安居」として開放されているため、営業時間内であれば外観及び喫茶室部分への立ち入りは可能である。また例年11月に東京都が主催する「東京文化財ウィーク」期間中であれば室内も見学できる。以下の写真は平成28年11月の訪問時で、ちょうど屋根の補修工事をされているところであった。

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玄関土間。円形窓周囲の兎の漆喰装飾が見どころ。兎の装飾は他にも釘隠しや階段の彫刻飾りなど、随所に見ることができる。

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洋風を取り入れた外観と異なり、間取りは伝統的な民家の間取りに即したものとなっている。

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見学に際しては、御当主自ら丁寧に案内して頂けるが、それによると、当家で使用されている材木は、節付きだったりして商品としては使えないものを用いているという。

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関東大震災後に交換された1階の正面を除き、創建当時の硝子戸が今も残る。
ドアノブは白い陶器でできている。

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当家の大きな見どころと言えるのが見事な造りの螺旋階段。
奥の扉が喫茶室の入口となっている。

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装飾的な手摺や透かし彫りで飾られた工芸品のような階段。ここにも兎の装飾が見られる。

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階段を上から見下ろす。移動が可能な置き階段になっている。

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2階の一室。太い梁を漆喰で包んでおり、一見鉄筋コンクリート建築かと思わせる。関東大震災後の修復で塗られた箇所は塗りが荒く従前からの壁と見分けることができる。当時は復興需要が高まって職人は多忙を極めたため、丁寧に仕上げてもらえなかったのだとか。

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約150年の歳月を経た硝子窓。

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訪問の度に丁寧に御案内頂いた小机家御当主様に厚く御礼申し上げます。
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小机家住宅

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