第1064回・旧岸家住宅(厚木市古民家岸邸)

神奈川県厚木市上荻野にある旧岸家住宅は、大規模養蚕農家の住居として明治24年(1891)に建てられた。色硝子を嵌めた二階座敷など異色の造りが特徴的な古民家である。厚木市指定文化財。

平成10年(1998)に岸家より厚木市に建物が寄贈され、現在は「厚木市古民家岸邸」として一般公開されている。

なお、敷地は厚木市が岸家から借り受けているという。

主屋は明治24年(1891)の竣工で、その後何度かにわたる増改築を経て現在の形になったとされる。

式台を備えた来客用玄関。見学に際してはこちらではなく、通常の出入り口として使われていた土間側の玄関から入る。

土間。床の一部はタイルを市松紋様に配したモダンな仕上げとなっている。

土間に隣接する広間は重厚な格天井となっている。

来客用玄関に隣接する客間。
1階には客間が3間あるが、どの部屋も欄間や床の間、天井や建具などに意匠を凝らしている。

材木も良材や珍奇な銘木の類がふんだんに用いられている。

付け書院を備え、最も格式高い座敷と思われる1階奥の客間。座卓も岸家で使われていたもので、漆塗りである。

上記客間の奥には客用便所があり、非常に凝った造りとなっている。
写真は便所横に設えられた手洗い場。

男子用便所。窓の建具がすごい。
左側の照明は壁を貫く形になっており、隣の女子便所も照らすようになっている。




便所周りの造作。左下は便所前廊下に嵌め込まれた魚型の埋木である。

階段は一部曲面を持つ折り上げ天井になっている。

2階座敷。赤い色硝子を市松紋様に嵌め込んだ建具が目を引く。

2階座敷床の間。

これらの建具類は創建当初からのものではなく、大正期の改造で入れられたもののようだ。

岸家は養蚕業を営んでおり、岸家の建っている厚木は、蚕から造り出された生糸が輸出されていた横浜に近い位置にあることも、家の造りに影響しているものと考えられる。

2階座敷の天井も変わった意匠となっている。

2階の背面には増築された洋室がある。

漆喰で仕上げられている洋室天井の換気口まわりの装飾。

洋室部分は外壁もタイル張りで洋風に仕上げられている。

洋間の硝子戸も、摺り硝子と透明硝子を市松紋様に配したものとなっている。

2階は特に建具に意匠を凝らしているのが印象的である。




岸家の窓硝子いろいろ。
色硝子、摺り硝子、結霜硝子、絵入り砂摺り硝子が見られる。




これも多彩な岸家の照明器具の数々。

見どころと発見に富んだ、大変興味深い造りの古民家である。
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コメントの投稿
こんばんは。
私も一ヶ月ほど前に、岸邸を訪問しました。市松の色ガラスも斬新ですが、各部屋の建具にも独特の意匠が見られる、個性的な建築ですよね。
何より、厚木の郊外にこんなにも立派な和風建築が存在したことが、一番の驚きでした。
私も一ヶ月ほど前に、岸邸を訪問しました。市松の色ガラスも斬新ですが、各部屋の建具にも独特の意匠が見られる、個性的な建築ですよね。
何より、厚木の郊外にこんなにも立派な和風建築が存在したことが、一番の驚きでした。
Re: タイトルなし
コメントありがとうございます。
意外なところに意外な建物を発見したときは非常に嬉しくなるものです。
個人宅にはまだ、こういう意外な発見ができる建物が存在しているように思います。
意外なところに意外な建物を発見したときは非常に嬉しくなるものです。
個人宅にはまだ、こういう意外な発見ができる建物が存在しているように思います。