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第1224回・旧大阪商船門司支店(北九州市旧大阪商船)

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北九州市門司区にある北九州市旧大阪商船は、戦前の日本を代表する船会社のひとつであった大阪商船(株)の門司支店として大正6年(1917)に建てられた。オレンジ色の煉瓦タイルにセセッション風意匠の塔屋が特徴的な門司を代表する大正期の洋風建築である。現在は北九州市が所有しており、国の登録有形文化財となっている。

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門司港レトロ地区の中心街にある北九州市大阪商船。隣接して旧門司三井倶楽部が山手より移築されており、JR門司港駅も歩いてすぐの位置にある。現在はギャラリーやカフェが設けられており、門司港でも指折りの観光名所となっている。

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木造二階建で部分的に煉瓦とコンクリートも用いた混構造の建物で、オレンジ色の化粧タイルと幾何学的な細部装飾が特徴であるセセッション風意匠の塔屋が目を引く。建てられた当時は海岸に面しており、尖塔部分は燈台の役割も果たしていたという。

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正面全景。角の塔屋の下に正面玄関が設けられている。かつては1階が待合室と税関派出所、2階が大阪商船(株)の事務所として使われており、待合室からは専用の桟橋を経て直接乗船できるようになっていた。

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大阪商船(現・商船三井(株))は明治17年(1884)に大阪で設立された船会社で、同時期に設立された東京の日本郵船と共に戦前の日本を代表する船会社であった。

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戦後は三井船舶と合併して大阪商船三井船舶→商船三井となり、現在も日本郵船、川崎汽船と共に日本の三大船会社と称されている。旧門司支店の建物は平成3年(1991)まで商船三井の事務所として使われていた。

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旧大阪商船の本支店で現存する建物は旧門司支店のほか、大正11年(1922)に神戸支店として建てられた神戸・海岸通の商船三井ビル、大阪港の施設として昭和8年(1933)に大阪・天保山に建てられた商船三井築港ビルがある。

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建物自体は近年の改築であるが、大阪・中之島のダイビル本館には、低層部に大阪商船本社が入っていた旧大阪ビルディング(大正14年竣工)の外観とエレベーターホールが旧ビルの部材を用いて復元されている。また、東京支店があった東京・内幸町の旧大阪ビルディング東京分館1・2号館跡には、旧ビルを飾っていた豚の頭部や鬼面などの奇怪な装飾が残されている。

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旧門司支店の設計者である河合幾次(1864~1942)は、東京帝大卒業後、逓信省を経て大阪で設計事務所を開業、後年は事業家として活動した人物であるが、詳しい経歴は不明な点が多い。

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大阪商船門司支店のほか、神戸市にある旧村山龍平邸の洋館(国指定重要文化財)が現存する設計作品として確認されている。なお、文化庁による旧村山邸重文指定時の解説によると、同じく重要文化財である岐阜県の旧八百津発電所(明治44年)の設計も手掛けたとされる。

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外壁を覆うオレンジ色の煉瓦タイル。当時の建物には潮風に強いとして外装にタイル(テラコッタ)を用いた例もあるので、海岸べりに立地することから外装材に採用されたのかも知れない。

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くびれのある通用口のアーチは、河合幾次と同級である伊東忠太が設計した西本願寺伝道院(明治45年・国指定重要文化財)の通用門と似ている。

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正面玄関。脇には登録有形文化財のプレートが嵌め込まれている。写真には写っていないが、商船三井時代の看板も北九州市の所有となった現在もそのまま残されている。

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玄関ホールは階段室を兼ねている。

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賑やかな外観とは対照的に館内は簡素で、階段の親柱や手摺もごくシンプルなものとなっている。

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船客の待合室があった1階と街路との間にはアーケード状の空間が設けられている。

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館内には戦前の大阪商船(左)と日本郵船のポスターが飾られていた。大阪商船の主力航路であった南米航路には戦前、村野藤吾や中村順平などの著名建築家が室内意匠を手掛けた「ぶら志゛る丸」「あるぜんちな丸」などの豪華船が就航していたが、大東亜戦争により悉く海の藻屑と消えた。

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随所に残る木製の古びたベンチは、大阪商船~商船三井時代から使っていたものかも知れない。

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旧大阪商船門司支店はJR門司港駅旧門司三井倶楽部などと共に、門司港レトロ地区を代表する歴史的建造物として観光客を集めている。なお、本文で触れた大阪商船の本支店の建物については、いずれも弊ブログにて以前取り上げているので、併せて御覧頂けると幸いである。
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