FC2ブログ

第1254回・旧中川家住宅

PC2817732.jpg

和歌山県御坊市御坊にある旧中川家住宅は、山林業を営む中川家の居宅として昭和13年(1938)に建てられた。良材を多用した伝統的な意匠の和風住宅であるが、洋風の応接間を設けるなど間取りや設備に近代性が見られるのが特徴である。現在は一般公開すると共に、食事処やギャラリーに使うなど各種の活用が図られている。国の登録有形文化財。

PC281705.jpg

横町通りに面した正面。主屋と土蔵(西蔵)が並んで建っている。
旧中川家住宅が建っている場所は、御坊市の中心街で本願寺日高別院の北側に位置しており、周囲にはかつて寺内町として繁栄していた頃の面影を残す古い家屋を見ることができる。

PC281703.jpg

主屋は正面側から見ると平屋建であるが、背面の庭園側は一部二階建になっている。特に正面玄関の上、庇が何重にも重なる重厚な造形は当邸の大きな特色となっている。

PC281774.jpg

邸宅を築いた中川計三郎(1889~1969)氏は明治44年(1911)に独立して中川計三郎商店を開業、紀伊半島及び近畿、中国、四国の各地に山林を所有し、木材の生産を行っていた。なお、現在は中川木材産業(株)として大阪を拠点に盛業中である。

PC281748.jpg

事務所も兼ねたと思われる居宅は昭和40年代まで使用されていたが、その後長く空家となっていた。取り壊しも考えられたというが、幸いにして社会福祉法人和歌山県福祉事業団の所有となり、平成26年(2014)には改修工事が施され、国の有形文化財に登録された。

PC281769.jpg

現在は敷地内にあった農機具小屋を改装し、障碍者就労支援施設でもある食事処「なかがわ」を営業している。主屋や土蔵は一般公開すると共にギャラリーとしても活用されている。

PC281757.jpg

昭和12年(1937)に上棟、翌年に竣工した邸宅は山林業者の居宅にふさわしく良質の材木を多用して建てられており、柱などの材木は80年以上経っているとは思えない質感を保っている。

PC281756.jpg

玄関左手の横町通りに面した部屋は事務所として使われていたと思われ、カウンターが設けられた板張りの事務室になっている。

PC281747.jpg

事務室とは続き間になっている一段高い畳敷きの座敷は、事務所を訪れる来客の応接室として使われていたと思われる。

PC2817142.jpg

応接室のさらに奥には上客を通すためか、洋風の応接間も設けられている。

PC281716.jpgPC2817532.jpg

PC281752.jpg

洋風応接間は暖炉を備え、ステンドグラスの入ったアーチ型の小窓や天井のシャンデリアなど、外観からは想像できない本格的な造りの洋室となっている。

PC2817222.jpg

洋風応接間から横町通りに面した窓を望む。
暖炉の脇にはステンドグラスの入った小窓がある。

PC281771.jpg

横町通りから洋風応接間の窓を望む。
外観からは洋室の存在は全く分からない。

PC281726.jpg

玄関の奥には中庭が設えられており、中庭を挟む形で一方に洋風応接間、もう一方に主人居室及び仏間が設けられている。中庭には切支丹燈籠が配されている。

PC281746.jpg

中庭と主人居室及び仏間との間に設けられた畳廊下。突き当りは東蔵の蔵前。

PC281729.jpg

主人居室は床柱にも角材を配した端正な書院造の座敷となっている。

PC281730.jpg

主人居室とは続き間となっている仏間。

PC281741.jpg

この2室に面して南側(背面)には縁側が設けられ、小さな庭園に面している。

PC281733.jpg

東蔵の蔵前。敷地内に土蔵は2棟あり、玄関脇、台所などに近い位置にある西蔵とこの東蔵がある。配置からして西蔵は生活用品等の収納に使い、東蔵は貴重品等の保管に充てていたのではないだろうか。

PC281737.jpg

数寄屋風で日当たりのよい位置にある夫人室。茶室としても使われていたようだ。

PC2817622.jpg

夫人室前の廊下窓に嵌め込まれた障子。
角を丸く取っており、建具にもさりげない趣向が凝らされていることが分かる。

PC281728.jpg

玄関脇、台所と隣接する茶の間。
日常生活の場であったと思われる部屋で、天井には採光用の天窓が設けられている。

PC281764.jpg

台所は昭和13年当時の最新式設備が取り入れられていたらしく、地元の女学校からは生徒達が見学に来たという。造り付けの戸棚の一角は隣の茶の間とつながっており、配膳口と思われる。

PC281766.jpg

洗面台。

PC281767.jpg

二階には数寄屋趣味を加味した造りの客座敷が2室あるが、原則非公開となっている。階段室腰壁の欄干状の装飾が面白い。

PC281779.jpg

南側(背面)から望む主屋。

PC281778.jpg

御坊でも指折りの重厚な造りで「日高御殿」と称されたこの邸宅には、敗戦直後の首相としても知られる東久邇宮稔彦王、和歌山出身の博物学者である南方熊楠などの著名人も逗留したという。

PC281781.jpg

和歌山県内に残る質の高い昭和初期の和風建築として見どころの多い建物である。
なお、以前紹介した「アメリカ村」の洋風住宅がある美浜町三尾は、御坊市街から車で20分程度の位置にある。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

syoukou

Author:syoukou
(ブログについて)
現存する近代日本の歴史的遺産(台湾など旧日本領土も含む)を建造物・土木構造物を中心に、思いつくままに取り上げております。

(写真について)
写真は特記しない限り管理人の撮影です。また絵葉書等の古写真は管理人の所蔵品、もしくは訪問先の展示品を撮影したものです。利用・転載等希望される場合は管理人まで御連絡頂けると幸いです。

(リンクについて)
リンクはフリーです。

(コメントについて)
記事と関係の無いコメントは削除させて頂く場合もあります。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード