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第141回・南海ビルディング(高島屋本店)

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大阪の中心部を貫く御堂筋には、昭和12年の開通当初より南北両起点にそれぞれ巨大なターミナルデパートが聳え立っていた。北の阪急百貨店(阪急ビルディング)と南の高島屋(南海ビルディング)である。
高島屋の本店でもある南海ビルディングは昨年外壁の改修工事を終え、大阪随一の盛り場・難波の街に威容を誇っている。鉄道省建築課長の経歴を持つ建築家・久野節の設計で、昭和7年(1932)の建築。

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極めて長大な建物なので全景を納めることが難しい。飾り壺を載せたコリント式列柱が支える14連アーチは、我が国に建てられた西洋古典主義建築の中でもなかなか例を見ない壮大なものである。

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かつては南海電鉄難波駅の駅舎でもあったが、昭和後期に難波駅はビル後方に移転したため、現在このビルには高島屋大阪店(本店)のみ入っている。なお、本店とはいえ高島屋はテナントであり、ビルの所有者は南海電鉄である。

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素晴らしい外観を有する南海ビルディングだが、内部は残念ながら当初の面影は殆ど残されていないようである。
昭和20年の戦災で全焼したためか、難波駅が移転して駅部分が改装されたことも理由かも知れない。
その点、北の阪急ビルディング(昭和4、設計施工竹中工務店)は装飾を控えたややモダンな外観とは裏腹に、硝子モザイクやシャンデリアに飾られたコンコースなど華麗な内装が魅力的で、古典様式の南海ビルとは好対照を為していた。

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が、その阪急ビルは、南海ビルが修復されているほぼ同時期、つまりごく近年に姿を消した。
今は旧ビルの外観を中途半端に模した薄っぺらいビルが建てられている。(言うまでもないことだが、その程度の外観のビルに、先代ビルのような華麗な内装など無い)南北で完全に明暗を分ける形となった。

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旧阪急ビルの末路を思えば、この華麗な南海ビルが保存、かつ美しく改修されたことは南海電鉄及び高島屋の英断と言える。阪急電鉄に見習って頂きたいものである。(見習って頂いても最早何にもならないが)

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南海ビルディングの外壁を飾るのはテラコッタと呼ばれる装飾用の大型陶器である。テラコッタは汚れがつきにくいこと、大量加工・生産が可能であることから19世紀のアメリカで摩天楼を飾る建材として大流行、日本でも大正半ばより本格的に建築用外装材として用い始められた。南海ビルに使用されたテラコッタの量は現存する戦前建築の中でも最大である。

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現在は装飾の施された部分以外は煉瓦サイズのタイル貼りだが、かつてはもっと大きなサイズのタイルが貼られていた。

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テラコッタ装飾のうち、一部ながら現在は失われている装飾もある。
かつて飾り壺の上部には円形のメダリオンが嵌められ、その上部である最上階窓間には装飾パネルが嵌めこまれていた。現在は全面タイル貼りになっているが、これらの装飾は今回の改修よりはるか以前に失われていたようである。

南海ビルの施工を行ったのは大林組だが、同社のサイトには竣工当初の写真が掲載されている。

http://www.obayashi.co.jp/works/search_purpose/search_purpose8/work_H661

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南海ビルはターミナルデパートの傑作であり、当初の外観をよく残している。
戦前期のターミナルデパートは阪急・南海の他、神戸の三宮阪神ビル(昭和8、阪神電鉄+そごう)、東京浅草の東武ビル(昭和6、東武鉄道+松屋)が現存するが、両者共改装が激しくもとの面影を探すのは難しい。なお設計はいずれも南海ビルと同じ久野節。

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設計者の久野節は鉄道省に長く在籍したため鉄道関係の建築が多い。
上記各ターミナルデパートの他近鉄宇治山田駅(昭和6、国登録有形文化財)の他、鉄道省観光局の主導で開業した旧蒲郡ホテル(昭和7、弊ブログ第35回参照)等が現存する。

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建物の両端は敷地の形状に合わせて曲線を描いている。この美しい曲線を持った姿が南海ビルの魅力のひとつ。

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時計塔アップ。

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下層の庇は今回の改修に際して、従前のものより創建当初に近い形状に改められた。

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改修後は、夕暮れ時から夜間にかけてライトアップされている。

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高島屋の大阪は東京にあるのと違った雰囲気が出てていいですね(^∇^)
実際に大阪に行ったら写真に残したいです( ^ω^ )
大丸、高島屋東別館と一緒に。

Re: タイトルなし

なべはるさん様

南海ビルはスケールの大きい建物なので、外観は日本橋高島屋より迫力があるかもしれません。
ただ中は日本橋のように昔の内装は残されていませんが、高島屋東別館は中もよく残ってます。

大阪へお越しの際は是非実物を御覧になってください。
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