第181回・高島屋東京店(旧日本生命館)

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東京日本橋にある高島屋東京店は、昭和8年(1933)に建設。百貨店建築としては最初の国指定重要文化財。

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当初の名称は日本生命館。日本生命が建設、高島屋が入居するという形であった。昭和38年までは日本生命東京支店が同居していた。現在は高島屋に所有が移っている。なお、日本生命と高島屋は共に大阪を本拠とする。

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建設に際しては昭和5年に設計競技が行われ、高橋貞太郎(1892~1970)の案が当選・採用された。高橋貞太郎は宮内省技師を経て建築事務所を開業、戦前は旧前田侯爵邸、學士會舘、川奈ホテル、戦後は帝国ホテル(現在の建物)等の設計で知られる。

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設計競技の規定では建築意匠は「東洋趣味ヲ基調」とするものとなっており、骨格は西洋古典建築の様式に則りつつも細部意匠には随所に和風を意識したものが見られる。

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昭和8年の開店当時、全館冷暖房装置完備を売りにしていた。暖房装置は明治からあるが、冷房装置を備えた建物ができるのは昭和に入ってからである。

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当時日本橋界隈の百貨店は三越と白木屋の二件があり、共に江戸以来の歴史を誇る老舗であった。そこに大阪の高島屋が進出したわけである。現在三越と高島屋は当時の建物のままで盛業中だが、白木屋はのちに東急百貨店日本橋店となり平成11年には閉店、今はない。

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正面両端を丸く仕上げている。

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北側側面。現在は本館が一街区全体を占めており、隣接する街区にも別館が建っているが、昭和8年当初は一街区のうち三分の一だけの規模だった。竣工後間もなく増築に着手するが昭和12年に支那事変が勃発、鋼材等建築材料の統制が行われ、調達が困難になったことから地階のみ出来た段階で頓挫した。

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南側側面。増築工事が再開されたのは昭和26年。その後昭和40年まで14年かけて漸く全館が完成する。戦後の増築の設計は村野藤吾(1891~1984)による。なお増築部分を含めた全体が重要文化財に指定されている。なお、村野藤吾の百貨店建築は高島屋増築が最初ではない。昭和10年に大阪で十合(そごう)百貨店本店を設計している。モダンスタイルの傑作だったが、そごう破綻後経営再建をを図った西武の手により解体され今は無い。(もっともそごう大阪本店の経営再建は失敗、薄っぺらい新店舗は現在隣接する大丸本店の別館となっている。)

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北側よりも南側の方が、戦前建築部分と戦後建築部分の対比が際立つものになっている。戦後の増築部はガラスブロックの外壁などモダンスタイルで構成されているが最上階の3連アーチ窓等、当初部分との連続性も図ったデザインが為されている。

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現在、高島屋東京店で買い物客用に使われる手提げ紙袋は全面にこの建物のイラストをあしらったものである。

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百貨店等の商業建築は性格上内外装の改装が行われやすく竣工当初の形が保持される例は少ない。高島屋東京店は内外共に当初の形をよく残しており、重要文化財指定の大きな理由であると思われる。(ただし、現存する他の百貨店建築でも他に重要文化財に指定されてもおかしくない建築は大阪の大丸百貨店本店等、まだまだ存在する。)

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正面玄関内側。ショウウインドウを備えたアーケードがある。

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同上、天井。緩やかな曲線を描く。1階エレベーターホールの天井もこのような曲線を持つものである。

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歴史的建造物の店舗を現在も使い続けている百貨店は複数あるが、風格ある建物を保存し、かつ建物自体を店の宣伝に積極的に用いているのは高島屋と大丸である。しかし重要文化財指定まで受け入れたのは現在高島屋のみ。(我が国の文化財保護は強制性が極めて低いので、どんな文化財も所有者の意向次第でどうにでもできるのが実態である。)

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現在高島屋東京店も周囲の再開発(高層化)が計画されているが、本館の保存を前提としている点で折角の名建築を取り壊し薄っぺらなビルに建て替えた阪急やそごうとは雲泥の差がある。
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No title

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます。
ありがとうございます。

Re: No title

生命保険の選び方 様

コメント有難うございます。
返信が遅れ申し訳ありません。
こんなブログですがよろしければ
また是非お越しください。

はじめましてです♪
私は九州に住んでますが、千葉に親戚がいるので、関東方面に行った時は日本橋の高島屋に何度も足を運びました♪
初めて行った時は一階の玄関、エレベーターなどに興奮しました♪
九州にはこんな立派な建物はないので、日本橋の高島屋に行くたびに田舎者だから感動させられます。
平成生まれのわたしですが、こういう建物が最近の再開発で姿を変えたり、消していくのはどうかと思います。

Re: タイトルなし

なべはるさん様

ようこそお越しくださいました。コメント頂き有難うございます。
お住まいの九州にも、訪れてこのブログに載せたい建物は沢山有るのですが、関東在住の現在の小生にとって九州はすっかり遠くなってしまいました。大阪に居る頃にもっと行けばよかったと悔やまれます。

高島屋は大阪の本店も立派な外観です。但し東京と違って内部はふつうですが。

こんなブログでよろしければ、これからもよろしくお願い致します。
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