第278回・奈良ホテル

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明治42年(1909)開業の奈良ホテルは、開業当初の建物で現在も営業を続ける数少ないクラシックホテルである。

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荒池に面した前景。御殿風の和風建築が雁行型に配置される。この建物が建った当時の奈良では、帝室博物館のような洋風建築は奈良公園の風致を乱すと反発を買ったため、県庁、県立図書館のような官庁、公共建築も和風の外観をまとっていた。奈良ホテルもそのような流れの中で建てられたものである。

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もうひとつの背景として考えられるのが当時洋式ホテルの利用者は外国人が大半であり、外国人に日本情緒を味わってもらう、とりわけ奈良のような土地ではそれが強く求められたのではないかと思われる。これは奈良に限らず当時のホテル全般に言えることである。

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客室部分は二階建てだが、食堂の入る棟は天井の高い平屋。現在朱色に塗られているテラスの欄干はかつては他の部分と同様白木だったが、敗戦後米軍に接収された時、白木は不潔だから全館ペンキを塗れというとんでもない事を言う者がいたそうだが、ホテル側の必死の説得の結果、この手すりを塗るだけで難を免れたという。

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正面玄関。設計は辰野金吾と片岡安とされているが異説もある。しかし極めて確率は高いと思う。
開業当初は暖房は暖炉を用いていたため屋根には煙突がいくつも立っていた。しかし小さな和風の屋根をてっぺんに載せており屋根の形に変化をつけていた。煙突があった頃に比べると屋根はいささか単調な感じがする。

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写真右手、駐車場になっている場所には昭和末期まで平屋建のラウンジ棟があった。開業当初は撞球室兼酒場として建てられた棟であったが、残念ながら現在は他所に移築されてしまった。

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奈良郊外、大阪府との境に近い近鉄学園前駅近くにある近鉄系列の美術館「大和文華館」の敷地内に移築されている現在の旧ラウンジ部分。「文華ホール」と名付けられ時折催事等の会場に使われているようである。

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この建物の特徴は、本館にはないステンドグラスが2枚はめ込まれている点である。

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もう1枚。いずれも木にとまる小鳥の図柄。

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堂々たる正面玄関車寄せ。

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天皇陛下はじめ我が国の皇族方は無論、外国からも英国皇太子、科学者のアインシュタイン、満州国皇帝溥儀、等々多くの貴賓がこの玄関をくぐった。

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吹き抜けになっているロビー。

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吹き抜け上部。照明器具以外は明治42年以来ほぼ全く変わっていないといってよい。

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ロビーに続く大階段。

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大階段の脇、現在はバーになっている旧読書室入り口の欄間には五重塔や鐘楼を描いたすりガラスがはめ込まれている。古い絵葉書の写真にも写っており、開業当初からのものと思われる。

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談話室。右端に少し写るピアノは大正11年にアインシュタインが宿泊の際、弾いたもの。横に当時の写真が掲げてある。

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大階段。

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二階から見た吹き抜け部分。欄干の擬宝珠は当初は金属製だったが戦時中の金属供出で陶器に改められ現在に至る。照明器具は昭和10年に満州国皇帝溥儀訪問に際して照明器具類を一新したというから、そのときのものだろうか。

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廊下。非常に天井が高い。4メートル位はある。

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客室。現在でも開業当初の暖炉が残っている。他木の天井や古風な照明器具等、客室部分までクラシックなクラシックホテルはなかなかあるものではない。

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客室の照明器具と天井。

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小食堂。暖炉脇の食器棚も古いものだ。

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小食堂とは襖で仕切られた大食堂。

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食堂部分の照明。

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小食堂からテラスへの出入り口。

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館内の暖炉は異なる意匠のものがある。
1階ロビー。鳥居を象った特異なもの。

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1階談話室。他、宴会場(旧喫煙室)、小食堂、大食堂も細部が若干異なるが基本的にはこの形。

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客室。少しアールヌーボー風のデザイン。
客室は2階貴賓室のみ、これとは異なる意匠の暖炉があるようだ。

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夜の奈良ホテル。
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