第525回・旧前田侯爵邸洋館

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旧加賀藩主・前田侯爵家の第十六代目当主である前田利為(1885~1942)が、東京・駒場に本邸として昭和4年(1929)に建てた邸宅。洋館と日本館から構成されている。陸軍銀人であった前田利為侯爵は、駐英大使館附武官を務めるなど英国生活が長かったためか、洋館は英国のカントリーハウス風にまとめられている。

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洋館正面。
前田侯爵家は、駒場に移転するまでは本郷の旧加賀藩邸跡の一角に邸宅を構えていた。
旧加賀藩邸の敷地の大半は明治維新後、新政府の所有となり、のちに東京帝国大学のキャンパスが置かれることとなったが、一部の敷地は前田家が引き続き所有していた。

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庭園側から望む洋館。
大正12年の関東大震災では、隣接する帝大が壊滅的な被害を受け、復興に際しては敷地の拡大が必要であったことから、前田家は帝大所有の駒場の土地と交換し、本郷の邸宅は帝大に譲渡した。なお明治末に建てられた本郷の旧本邸は、その後東京帝大の迎賓施設として保存されていたが、昭和20年の東京大空襲で失われてしまった。

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側面から望む。内玄関と使用人用玄関がある。
洋館の設計は、帝大建築学科教授の塚本靖(1869~1937)の指導の下で、東京・神田の學士會舘や伊豆の川奈ホテルの設計で知られる高橋貞太郎(1892~1970)が担当している。施工は竹中工務店。

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この邸宅が前田侯爵家の本邸として使われた期間はわずか10年と少しであった。
前田利為侯爵は、大東亜戦争下の昭和17年にボルネオ守備軍司令官に任じられるが、同年ボルネオ島沖で搭乗する軍用機が消息を絶ち、のちに死亡が確認される。(事故死か戦死かは今も不明)

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前田侯爵家は相続税支払に加え、敗戦による華族制度廃止、財産税課税で他の大名家と同様経済的苦境に陥る。
邸宅は連合軍に接収され、空軍司令官官舎として使用される。なお、昭和26年に解任されたマッカーサーの跡を受けて二代目GHQ総司令官となったリッジウェイ将軍も、この邸宅で暮らしている。

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昭和32年に接収が解除された後は東京都が所有し、長らく東京都近代文学博物館として使用されたが平成14年に同館は閉館、現在は旧前田侯爵邸洋館として土・日・祝日のみ一般公開している。
その間、平成3年に東京都の有形文化財に指定されている。

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博物館に使用されていた頃は、展示ケースなどで建物のインテリアが隠されていたところも多かったが、現在は建物自体を文化遺産として公開・見学対象にしている。

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来客を迎えての晩餐会などに使用された大食堂。日常使用するための小規模な家族用食堂が別にある。

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階段。

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階段の下にあるイングルヌック。(大広間など広間の一角に設えられた暖炉付の小スペース)
イングルヌックを備えた邸宅は少なく、既に弊ブログで取り上げた建物では、福井県にある右近権左衛門邸にもイングルヌックがあるので、比較して頂くのもよいかと思う。

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二階、前田利為侯爵の書斎として造られた部屋。

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夫人用居間。前田家の団欒の場はこの部屋であったという。
なお前田侯爵家の生活は、夜ベッドに入る時以外は常時靴を履くという、完全な洋式の生活であったという。

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侯爵夫妻の寝室。

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同、暖炉。

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前田侯爵邸の各部屋には様々な意匠の暖炉が置かれている。
最も大きく立派なのは、やはり大食堂の暖炉。

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一階サロンの暖炉。

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中でも変わっているのが、二階にあるこの暖炉。
巨大な陶器の置物にも見える。

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一個の美術品として、これだけで十分鑑賞できる。

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これも二階の一室にある暖炉。こちらも全面陶器で覆われているのが特徴。

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渋い色合いがすばらしい。

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館内を彩るステンドグラス。いずれも淡い色合いが特徴。
(上左)二階婦人用居間(上右)一階階段室イングルヌック脇
(下)階段室

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採光用の中庭があり、外壁と同様茶色のスクラッチタイルを貼る。

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旧前田侯爵邸は洋館のほか、渡り廊下で繋がれた日本館がある。
稿を改め、次回紹介させて頂く。

旧前田侯爵邸 つづく
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