第616回・旧大名ホテル(日光市役所日光総合支所)
日光東照宮に近い場所に建つこの建物は、大正年間にホテルとして建設されたものの、未完成のまま結局開業に至らなかった幻のホテルである。現在は日光市役所日光総合支所として使われている。国登録有形文化財。
日光が皇族を始め貴顕富豪や外国人のリゾート地として賑わっていた明治末期、地元の名士であった小林庄一郎氏が外国人向けホテルとして建設を計画、大正年間に建物外部までが完成したという。
ホテルは「大名ホテル」と名付けられたが資金等の事情で計画は頓挫、建物内部の工事も進まず、実際にホテルとして営業されることはなかったそうである。
大東亜戦争中の昭和18年に古河電工(株)日光精銅所が買収、工員宿舎として利用されるが敗戦後は占領軍に接収され社交場として使われる。
接収解除後の昭和24年に古河電工から日光町(当時)に寄付され、改修の上昭和27年から日光町役場として使用される。
昭和29年にの市制施行後は日光市庁舎として長らく使われた。平成18年に今市市他周辺市町村と合併後は、本庁を旧今市市庁舎に移したため、現在は日光総合支所として使われている。
合併、本庁移転と同じ平成18年に、建物は国登録有形文化財となっている。
正面の外壁はモルタル塗仕上げだが、側面及び背面は下見板張りになっている。
竣工当初は正面も下見板張りであった可能性もある。
玄関周りは和風建築に見られる、柱を露出する真壁になっており、奈良ホテルを連想させる造りになっている。
幻のホテルは、今も行政庁舎として現役で使われている。
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