第623回・旧秩父宮御殿場御別邸(秩父宮記念公園)

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静岡県御殿場市にある秩父宮記念公園は、かつての秩父宮御殿場御別邸を整備・公開しているものである。
邸内には江戸時代の庄屋の館を昭和の初めに移築改装した母屋などが残されている。

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主屋の建物は、元々御殿場市深沢の庄屋小宮山家の住宅として享保8年(1723)に建てられたものであるが、昭和2年(1927)に日銀総裁や蔵相を務めた政治家の井上準之助(1869~1932)が購入、現在地に移築改装し洋室などを備え別邸として使っていたが、昭和7年の血盟団事件で井上は暗殺される。

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その後昭和16年、肺結核を患い闘病生活を送られていた秩父宮雍仁親王(1902~1953)の転地先として井上家別邸が選ばれ、療養室の別棟などが増築され秩父宮家別邸として使われる。雍仁親王は昭和27年1月に藤沢市の鵠沼に移られるまで勢津子妃(1909~1995)と共に御殿場で約10年に亘り過ごされている。

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雍仁親王は昭和20年8月15日の玉音放送を、弟である高松宮宣仁親王と共にこの別邸で聴かれた。
戦後は皇室と国民との懸け橋となるべく、積極的な言論活動に取り組まれると共に、地元の成人式や高校の卒業式で祝辞を述べられるなど地元との関わりも深められた。

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昭和19年に東京赤坂の秩父宮家本邸から移設された、朝倉文夫制作による雍仁親王の登山姿の銅像。
登山のほかスキーなどスポーツを好まれたことから、「スポーツの宮様」として親しまれた雍仁親王は、病状が快癒されないまま昭和28年、50歳で薨去。御殿場の別邸はその後、勢津子妃が夏季を中心に利用されていた。

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勢津子妃が平成7年に薨去されると、遺言により別邸は御殿場市に寄贈、公園として開放されることになり現在に至る。邸内にある写真の四阿(あづまや)は、勢津子妃によって来客をバーベキューでもてなす際に使われていたという。

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母屋は、玄関を入った土間の部分は煉瓦造りの暖炉を備え、窓にはステンドグラスを嵌めた重厚な洋室に改装されているが、座敷や囲炉裏のある部分は移築前の姿を残していると思われる。大正から昭和初年には富裕層の間で古民家を移築改装した別荘を建てることがしばしば行われたが(軽井沢の三五荘など)、この建物もそのような事例の一つと言える。

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母屋の洋室は井上準之助の別邸として移築されたときに造られたものと考えられるが、家具調度類は雍仁親王の愛用品が机上の小物に至るまでよく残されている。

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なお内部は撮影禁止の為、残念ながら写真は無いがこちらのサイトで見ることができる。煉瓦造の暖炉を備えた洋間が素敵。
しずおか近代和風建築さんぽ 秩父宮記念公園母屋
http://kindaiwafu.eshizuoka.jp/e1020555.html

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平成12年に「旧秩父宮御殿場御別邸」として御殿場市指定文化財に指定されている。

(参考資料)
JTBキャンブックス「皇室の邸宅」平成18年 鈴木博之監修
秩父宮記念公園ホームページ
http://chichibunomiya.jp/history/index.html
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