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第67回・旧芝川又右衛門別邸

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大阪・船場で江戸時代より唐物商を営む芝川家は明治以降不動産開発等の事業に主軸を移し、現在の兵庫県西宮市に甲東園と称する果樹園を拓いた。旧芝川邸は明治44年(1911)その甲東園を見下ろす一角に設けられた別宅である。その後昭和2年に新館を増築し、芝川家本邸となった。平成7年の阪神大震災で煙突が折れる被害を受けたのを機に旧館が明治村へ寄贈され、暫く解体材の状態で保管されてきたが平成19年に再建された。国登録有形文化財。

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国会議事堂の設計にも関与し、のち京都帝国大学教授も務めた建築家・武田五一の設計。かなり大胆な和洋折衷を試みた洋館であり、今日の目で見ても相当斬新なデザインの住宅である。

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傾斜地に建っているので、御影石と煉瓦で高い基壇を築いている。
明治村に移った現在地でも、敷地は移築前の地形に合わせて造成している。

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白いスタッコ塗りの外壁と赤いスペイン瓦葺の屋根を持つ現在の外観は、昭和2年に新館を増築した際、旧館も外装を新館に合わせたものに改造されたものである。明治44年の創建当初は外壁が杉皮貼りで、もっと和風色の強い建物だった。尚、昭和2年の増改築設計も武田五一が指導を行っている。

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暑い時期は、二階向かって左側もベランダ同様に硝子戸の無い状態になっている。

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旧館裏手。移築前はここに新館がつながっていた。和室をメインに、一部洋室から成る新館は震災後も甲東園にあったが、近年解体されてしまった。現在、玄関及び洋室部分の部材は保管されているというが、明治村に再建できないものだろうか。明治村の現在の敷地は、旧館の裏に丁度納まるのではないかと思えるスペースがある。

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玄関ドア上部欄間のステンドグラス。
色硝子を使っていないので一見ステンドグラスには見えないが、切った硝子片を鉛で繋いでいるので、立派なステンドグラスである。

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玄関ホール兼階段室のステンドグラス。

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外から見た上記ステンドグラス。

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一階広間。芝川家では茶会の古美術品の展示場にも、またダンスホールとして使われた事もある。
天井は網代と葦簀張り、内壁は赤みがかった聚楽壁、床はリノリウム貼り。
椅子・テーブルは古写真を基に復元したものと思われる。

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一階広間の暖炉。同じデザインのものが反対側にも据え付けられている。
焚き口の両脇にはアールヌーボーのタイルが貼られている。

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一階広間天井。網代と葦簀を市松に配した斬新なもの。

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室内側から見た一階ベランダ。天井だけ見れば数寄屋建築と変わりない。細い丸太の並ぶ軒裏が美しい。

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外から見た一階ベランダ。明治44年の創建当初こそ、このような吹き放ちのベランダだったが、昭和2年の増改築時には硝子戸がはめ込まれサンルーム的な造りとなっていた。つまり建物全体は昭和2年当時の姿に復元している中で、ベランダ部分だけは明治44年というわけで、時代考証の面から見るとちぐはぐなのだが、デザイン上の大きな見せ場である当初の姿を重視し、敢えてこのようにしたようである。

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完全に和風デザインのベランダ灯具。

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湯殿天井。湯気抜きのスリットの模様は昆虫をイメージ。

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二階階段室。壁はキンキラキンだが、不思議と簡素なデザインの階段や葦簾と調和している。

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一階から階段室を見上げる。葦簀・網代・板の組み合わせが美しい。

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二階座敷の床の間。

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床の間の天井は見事な格天井。

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床の間側から見た二階座敷。この広さの座敷としては異様に天井が高いことが分かる。
面白いのは真ん中の襖である。床の間の正面にあるこの襖を開くと↓

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暖炉が隠されていた。

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座敷の天井は棹縁と網代を交互に組み合わせた特異な意匠。

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震災後解体から再建まで12年、その過程には関係者の大変な苦労があり深く敬意を表したい。
ただ贅沢を承知で言うと、現在一部が解体保存中と言われる新館も、ここに再建できないものだろうか。
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