第844回・旧木内重四郎邸洋館(木内ギャラリー)

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千葉県市川市真間にある木内ギャラリーは、明治・大正期の官僚・政治家で、京都府知事、貴族院議員等を歴任した木内重四郎(1866~1925)が当地に建てた別邸のうち、洋館部分を平成16年(2004)に再建したもの。再建に際し大部分は新材に置き換えられているが、内装材や建具等の一部には、もとの旧部材が用いられている。

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江戸川を挟んで東京都に隣接する市川市は、永井荷風などの文人が多く住んでいたことでも知られるが、明治から昭和戦前にかけて富裕層の別邸も点在していた。旧木内別邸もそのひとつである。

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旧木内別邸は平成10年代初めまで、約1万坪に及ぶ広大な敷地と洋館・日本館から構成される邸宅が老朽化しながらも往時の佇まいをそのまま残していた。写真に写る洋館の左側、外壁がのっぺりしている部分は、もともと日本館がつながっていた部分である。

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その後宅地開発により邸宅は取り壊され、日本館は完全に消滅、洋館は敷地内で場所を移して再建されることになった。なお敷地は緑地部分の多くを保全する形で開発が行われたため、往年の面影が幾分かは残されている。

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開発業者によって再建された洋館は、構造は木造から鉄筋コンクリート造に改められ、内外装の部材も多くが新材に置き換えられたが、形は旧建物を概ね忠実に復元しているように見える。

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再建後、開発業者から市川市に寄贈された洋館は、現在は市民ギャラリーとして開放、音楽会や展覧会の会場として活用されている。

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屋根は天然スレートで葺かれている。
望楼を備えた塔屋部分は、旧建物では当時としては珍しい鉄骨造であったという。

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玄関ポーチ。神社仏閣にみられる斗栱(ときょう)の変形とされる柱上部の組物が特徴。

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格子状になった玄関ポーチの天井部分。

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玄関扉や欄間の金物装飾は旧建物の部材が再利用されている。

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玄関ホールへ続く扉も旧建物のオリジナル部材。

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玄関ホール正面のニッチ。立てかけてあるのは旧建物の棟札で、洋館の設計者として鹿島親房、そして今はない日本館の設計顧問として茶室研究家としても活躍していた保岡勝也(当ブログで以前紹介した埼玉県川越の旧八十五銀行旧山崎家別邸の設計者)の名が書かれている。

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塔屋に設けられていた望楼へ登るための階段。直線を基調とした階段手摺は旧建築のオリジナル部材かと思われる。なお現在は塔屋内部は非公開。

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旧応接室。暖炉の木製飾り及び両側の造りつけ戸棚は旧建物のオリジナル。

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暖炉の大理石、タイル、焚き口の金物は新規材による復元。

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洋館の内部では最も重厚な雰囲気の旧書斎。暖炉上部のアーチ部分の壁画、暖炉周りの造りつけ飾り棚や腰掛など凝った造形を見ることができる。

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暖炉周りとベイウインドウのある部分を仕切る形で、和風の高欄細工を備えた間仕切りを設けている。

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飾り戸棚や建具等に旧建物のオリジナル部材が用いられている。これに対し寄木張り風の床や暖炉のタイル、大理石などは新規材による復元である。

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重厚な旧書斎とは一転し明るい雰囲気のベランダ兼サンルーム。旧建物では書斎より床が15センチ程低かったが、現在はベランダ側の床を嵩上げする形で平坦化されている。

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大部分が新材に置き換えられてしまったのが惜しまれるが、千葉県内に現存する大正期の洋館の邸宅としては、千葉市稲毛の旧神谷傳兵衛別荘と並ぶ質の高い建物ではないかと思われる。また市民ギャラリーとしての利用も頻繁に行われているように見受けられ、喜ばしいことである。

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旧木内別邸と同様にマンション開発で取り壊され、現在は内装材や建具などが保存、将来の再建も視野に入れながら保存部材の再利用が進められている神戸市垂水区塩屋の旧ジョネス邸も、この木内ギャラリーのような形で将来甦るとよいのだが・・・
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木内ギャラリー

森林の中に、その建物はありました 大正3年竣工の旧木内重四郎邸 比較的保存状態の良好だった洋館部材を利用した復元再築 残念ながら和館部分は無くなりました 塔屋は残念ながら非公開にて立ち入り禁止 千...

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